かがみや



与一(よいち)さの、お仏壇(ぶつだん)

 むかしむかし、ある村の金持ちの物持ちが、それはそれは立派(りっぱ)なお仏壇(ぶつだん)を買うたんにゃといの。ほいて、ほれが、自慢(じまん)で自慢で仕方(しかた)なかったんにゃそうな。

 ある日、坊さん(ぼうさん)を頼んで、お経(おきょう)をあげてもろたんやと。ほんとき、ほの家の主人(しゅじん)が、

「この村ばっかか、近くのどの村のどの家にも、こんのちの、この仏壇ほど立派な仏壇はないじゃろう。なんというても、こんのちの、この仏壇が一番(いちばん)でござんしょ。」

と、自慢したんにゃそうな。

ほいたら、お坊さんが言うたんにゃと。

「なるほど。これ程(ほど)の仏壇は、ちょっとこの辺(へん)には、あるまいの。じゃがの、さすが、この立派な仏壇も、右村(みぎむら)の与一(よいち)さの仏壇には、かなわんじゃろのう。」

そこで、金持ち物持ちの主人は、あわてて言うたそうな。

「そんな筈(はず)はありませんやろ。うちのこの仏壇より立派なんて、そんなんがあるんなら、どうしても見たいもんじゃ。」

ほいたら、坊さんは、

「そうじゃ、あの与一さの仏壇は、どうでも一度(いちど)は見せてもらいなはれ。あんたの仏壇は、あすも、あさっても来年(らいねん)も再来年(さらいねん)も、何十年経っても(たっても)、この仏壇じゃ。ほれに、少しずつ古くなるばかりじゃ。与一さの仏壇はちがう。毎日毎日新しくなるんじゃ。それには、誰(だれ)もかなわんじゃろ。」

 

 主人は、坊さんのそういう言葉(ことば)を聞いて、

「そんな馬鹿(ばか)な!!」

と、思いながら、与一さの家を訪ねて(たずねて)、仏壇を見せてもろたんにゃと。ほいたらさすがの主人も、これには感心(かんしん)してもたんにゃとの。

 与一さの仏壇は、芝(しば)を編んで(あんで)こっせたもんやった。

 与一さは、毎朝山へ行って、新しい芝を刈って(かって)きて、それを洗うて(あろうて)、きれいに切り揃えて(きりそろえて)、新しい糸で小さなすだれんてなのを編んで、それを台の上に三方(さんぼう)を囲む(かこむ)ようにして立てて、ほの奥(おく)に仏様(ほとけさま)をおまつりしたんや。それが与一さの、毎日毎日新しくなるお仏壇やった。

 与一さは、毎朝毎晩(まいあさまいばん)、そのお仏壇におまいりしてたんにゃと。与一さの仏壇ほど、立派な仏壇って、どこ探いたかって(さがいたかって)ねえわのう。

話者:堀井 幹ニ  再話者:坂下 淳子  採話地:福井市文京


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